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第112回実験実習支援センターセミナー


沖縄県におけるヒトゲノム研究の意義と今後の展望

演 者

前田 士郎(琉球大学大学院医学研究科先進ゲノム検査医学講座教授)

日 時

平成27年12月10日(木)14:30〜

場 所

基礎研究棟2階 教職員ロビー

講演要旨

2003年にヒトゲノムプロジェクトが完了し、30億文字(30億塩基対)におよぶヒトゲノム配列のほぼ全容が明らかにされ、その後、さらなるゲノム情報の整備および革新的技術開発により、ヒトゲノム全域にわたり生活習慣病発症に関わる遺伝情報を探索すること(ゲノムワイド関連[相関]解析:genome-wide association study [GWAS])が可能となった。このGWAS導入後、生活習慣病のゲノム研究は飛躍的に進歩し、2型糖尿病では現在までに100カ所以上の疾患感受性遺伝領域が同定されている。
現在、ゲノム情報を利用した疾患発症予測、さらには個別化予防の試みもなされているが、現時点でのゲノム情報では、それぞれの疾患の遺伝的要因を最大で一割程度しか説明できないとされている。得られているゲノム情報は臨床応用のためには未だ不十分であり、ゲノム情報単独では全人口の5%程度のハイリスク群を抽出できるのみである。さらに、個々の領域が如何にして疾患感受性に寄与するかは殆ど明らかとなっていない。従来使われてきた個別化医療という言葉は、オーダーメイド医療あるいはテーラーメイド医療、英語ではpersonalized medicineとも呼ばれてきた。一人一人に最適の治療法、予防法をゲノム情報を基に多くの選択肢の中から個別に選択して提供していこうというコンセプトであるが、一方でこの概念では医療コストの上昇も懸念される。さらに、疾患感受性機構が想像以上に複雑であることが明らかとなってきた事から、より現実的な概念に変更されようとしている。最近、米国を中心に、precision medicineという言葉が使用されるようになってきている。各々の疾患についてゲノム情報により患者群をサブグループに分類し、各グループについて適切な治療法、予防法の構築を目指すという概念である。そのためにはまず全ゲノムシーケンスなどによるゲノム情報、エピゲノム、メタゲノム解析等を含めた環境要因、生活習慣(ライフスタイル)を総合的に解析していく事が必要と考えられている。
一方で、遺伝的背景は人種、地域により異なっており、特に島嶼県である沖縄県では独特の遺伝背景がありメタボリック症候群をはじめとした生活習慣病の罹患率も高いことが示されている。沖縄県の健康長寿復活のためには、沖縄県民および沖縄各地の住民それぞれの特徴(遺伝要因と環境要因)を明らかにする必要があり、今後、沖縄県民における、大規模な遺伝因子、環境因子の統合解析を行うことで沖縄県民の健康長寿復活に貢献することが期待される。

                生化学・分子生物学講座 再生・修復医学部門・実験実習支援センター 共催



 このセミナーは大学院博士課程の講義として認定されています 


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Last Updated 2015/11/25