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第114回実験実習支援センターセミナー


3D−RISM理論を応用した薬物候補化合物の探索

演 者

杉田 昌岳(立命館大学生命科学部生命情報学科助教)

日 時

平成28年3月8日(火)16:00〜

場 所

基礎研究棟2階 教職員ロビー

講演要旨

 薬のスクリーニングを計算機上で行うためには、分子間の親和性、すなわち結合自由エネルギーを精度よく計算する必要がある。但し、生体高分子は真空中でなく溶液中でその機能を発現するため、結合自由エネルギーを計算するためには溶質間の自由エネルギー変化(ΔGsolute)だけではなく結合部位付近に存在する水を排除(脱溶媒和)するために必要な自由エネルギー変化(ΔGsolvent)を正確に計算する必要がある。このような目的に対して、液体の統計力学理論である3D−RISM理論1)が有効であることが示唆されてきた。3D−RISM理論は平衡状態における溶質周囲の溶媒の分布を解析的に計算する理論である。これまでに、本理論を応用することで、リガンドフラグメントの結合部位を正確に予測可能であることが示されている2)。また、MDシミュレーションを組み合わせたMM/3D−RISM法を用いることで、溶液中における溶質の揺らぎも考慮した上で、結合自由エネルギーを予測可能であることが示唆されている3)。しかし、これまで本格的な応用はなされて来なかった。
 近年、我々はこれらの方法を応用し、実際に薬剤候補分子を探索する試みを開始した。そのため、それぞれの系に最適化されたプロトコルの開発を試みた。本研究では第一に、薬剤活性を持つシクロデキストリン誘導体をスクリーニングするために、シクロデキストリンに最適化された計算プロトコルを開発し、テストシステムにてその定量性を検証した。その結果、実験値と相関係数R=0.7程度の相関を持ち、絶対値としても非常に近い値を予測することが出来た。現在ゲスト分子の形や電荷分布とシクロデキストリンとの親和性との関係性の解析を進めている。第二に、タンパク-リガンド系のスクリーニングに応用するためのプロトコルを開発するために、Pim−1 kinaseと8個のリガンドとの間の結合自由エネルギーの予測を試みた。その結果、本研究においてもR=0.7程度の実験値との相関を得た。

1) A. Kovalenko and F. Hirata, J. Chem. Phys., 112, 10391-10402 (2000)
2) T. Imai et al., J. Am. Chem. Soc., 131, 12430-12440 (2009)
3) S. Genheden et al., J. Phys. Chem. B, 114, 8505-8516 (2010)

                      分子神経科学研究センター・実験実習支援センター 共催



 このセミナーは大学院博士課程の講義として認定されています 


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Last Updated 2016/2/25