宮武 智弘(龍谷大学理工学部物質化学科教授)
平成29年5月12日(金)17:00〜
基礎研究棟2階 教職員ロビー
クロロフィルは光合成において光の捕集とエネルギー変換に関わる重要な成分であり、その分子の構造はテトラピロールと呼ばれる環状の骨格の中心にマグネシウムイオンが配位したものである(図1左)。環の周辺にはいくつかの置換基が配置され、これらの置換基の違いはクロロフィルの光吸収特性に影響を与えており、光合成生物はその生育環境に適した構造のクロロフィルを利用している。一般に光合成器官では、たくさんのクロロフィル分子がタンパク質の中で機能発現に適した位置に並べられている。こうして光合成生物はクロロフィルを並べることで分子間で効率の良いエネルギー(励起エネルギー)移動および電子移動を可能とし、光捕集・エネルギー変換を実現している。
ここでは、生体より抽出したクロロフィルを有機化学の手法を用いて改変した“修飾クロロフィル”(図1右)を合成し、それを組織化させた分子集合体(図2)を創製する。クロロフィルのテトラピロール骨格およびその周辺の置換基を変換することにより、その光吸収特性や分子集合体の構造を変化させ、クロロフィルの新たな機能を見出すことを目的としている。これまでの研究から、水に不溶であるクロロフィルに親水性の置換基を導入することで、クロロフィルの分子集合体を水中で安定に形成できることを見出した。また、脂質二分子膜中でクロロフィル類を集積化させることによって特異的な発光特性を発現させるなど、様々な媒体中で“修飾クロロフィル”が興味深い物性、機能をもたらすことが明らかとなってきた。
図1.クロロフィル-a(左)および 図2.化学修飾したクロロフィルによる
修飾クロロフィル(右) 分子集合体
生命科学講座 化学・実験実習支援センター 共催
本セミナーは、大学院博士課程「医学総合特論」の認定セミナーです |
前へ | 先頭へ |
Last Updated 2017/5/1