平成29年9月23日(土)〜24日(日)に愛媛大学医学部で開催されました第58回日本組織細胞化学会総会・学術集会において、イメージングの最新技術を用いた医学研究に関するシンポジウムを企画・開催致しました。その内容は大変素晴らしく、是非、滋賀医科大学の研究者・大学院生の皆様にも聴いて頂きたいと思い、シンポジウムの中から評価の高かった2題を選び、実験実習支援セミナーでのご講演をお願いしたところ、ご快諾を頂きました。以下に演題名と抄録を記載します。お忙しいこととは思いますが、是非、ご参加下さい。
(神経難病研究センター・神経診断治療学部門 遠山育夫)
平成29年11月2日(木)16:00〜
基礎研究棟2階 教職員ロビー
演題1: 二価鉄イオンのライブイメージングを可能にするケミカルツールの開発
岐阜薬科大学・創薬化学大講座薬化学研究室 准教授 平山 祐(Tasuku Hirayama)
鉄は我々の体内において最も多く含まれる遷移金属種であり、生体内における鉄イオンは、その形態から二種類に大別できる。一つはタンパク質に強固に結合し、酵素の活性中心や補因子として機能するもの、もう一つはタンパク質と弱く結合、もしくは非結合のもの(自由鉄とも呼ばれる)である。自由鉄は細胞内の還元環境等から、主成分が鉄(II)イオンであり、細胞内の輸送や代謝における中間化学種として重要である。一方で、鉄(II)イオンは酸化ストレス源にもなりうるため、その濃度制御は非常に厳密なものとなっている。実際、鉄ホメオスタシスの崩壊は酸化ストレスを惹起し、がん、神経変性疾患のみならず、多数の疾患において関与が認められている。以上のように、生理的・病理的観点から、鉄(II)イオンを生体内で検出することは、非常に意義深い。我々のグループではN-oxideの化学を利用し、自由鉄と呼ばれる生体内鉄代謝や酸化ストレスに関与する鉄(II)イオンを選択的に検出できる新しい蛍光プローブRhoNox-1およびRhoNox-2の開発に成功した。また、これらを応用することで、過剰鉄発がんにおける自由鉄の蓄積、加齢黄斑変性症モデルにおける自由鉄変動などを明らかにしてきた。本発表では蛍光プローブの作用原理、性質といった化合物特性から、プローブ分子の構造展開による多色化、小器官標的化に関する最近の取り組みと、蛍光だけでなくMRIを使ったイメージング研究についても紹介したい。
演題2: iPS細胞由来胚性マクロファージの可能性
京都薬科大学・病態生理学分野 准教授 高田 和幸(Kazuyuki Takata)
組織マクロファージは、貪食、免疫、炎症、修復機能により生体の発生や恒常性維持に必須であり、種々の疾患にも深く関与する。組織マクロファージの前駆細胞は、胎生期の一次造血に由来する胚性マクロファージであることが解明されつつある。我々は、iPS細胞から一次造血を再現し、胚性マクロファージ(iMacs)や、脳マクロファージであるミクログリア(iMicros)の作製に成功した。本セミナーでは、iMacsやiMicrosの作製や応用について紹介する。
神経難病研究センター神経診断治療学部門・実験実習支援センター 共催
本セミナーは、大学院博士課程「医学総合特論」の認定セミナーです |
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Last Updated 2017/10/2