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ガスクロマトグラフ質量分析計について

 ガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS:Gas Chromatograph-Mass Spectrometer)は、ガスクロマトグラフと質量分析計というそれぞれ別々に開発された二つの分析装置を組み合わせたものです。検出器に質量分析計を採用したガスクロマトグラフと表現することができます。
 ガスクロマトグラフィーは混合物を個々の成分に分離する能力に優れていますが、物質の同定は保持時間(ガスクロマトグラフィーの条件で試料を気化室に注入してからカラムで分離されて検出器に出て来るまでの時間)によっているため劣ります。一方、質量分析法では質量スペクトルに構造に関する情報が含まれていることから物質の同定能力に優れていますが、混合試料の同定は困難です。この様にGC−MSは互いの短所を補って長所を活かした分析装置です。

装 置

 GC−MSはガスクロマトグラフ、ジェットセパレータ、質量分析計の三つの部分から構成されています。

ガスクロマトグラフ

 ガスクロマトグラフは、有機混合試料をその試料成分に分離するための装置で、試料を気化させるための試料気化室と分離カラム、および、カラムを一定の温度に保つための恒温槽より構成されています。試料気化室に注入され気化した試料は、不活性キャリアガス(ヘリウム)と共にカラム内を移動する際キャリアガスと固定相との間の分配率や吸着の差によって各成分ごとに分離されカラム出口より流出します。

ジェットセパレータ

 ガスクロマトグラフで分離された試料成分は大量のキャリアガスとともに大気圧に近い状態でカラムから流出してきます。一方、質量分析計は高真空で動作させる必要があるため、流出成分からキャリアガスを除く必要があります。この為ガスクロマトグラフと質量分析計を接続するのにジェットセパレータというインターフェイスを用いています。ジェットセパレータは、混合気体をノズルから真空中に噴出させたとき、重い分子は拡散が小さく、軽い分子は拡散が大きいことを利用したものです。軽いキャリアガスは真空中に拡散し真空ポンプで排気され、重い試料成分分子は拡散せずに質量分析計へ導入されます。

質量分析計

 ガス化した試料をイオン化し、生じたイオンを質量対電荷比(m/z)によって分離し、定量する装置で、試料をイオン化するためのイオン源、イオンをm/zによって分離するための分析管、分離されたイオンを検出しイオン量を測定するための検出器、および、装置を制御したり得られたデータを処理するためのコンピューターから構成されています。

イオン化

 試料分子のイオン化にはいくつかの方法がありますが、一般的には電子衝撃イオン化(EI:Electron impact Ionization)と化学イオン化(CI:Chemical Ionization)がよく用いられています。

電子衝撃イオン化法(EI法)

 もっとも一般的なイオン化法で、気化した試料分子に熱電子を照射するとその電子のもつエネルギーで試料分子から電子が1個放出され分子イオンが生成します。ほとんどの場合このイオンは余剰エネルギーを持っているために開裂しフラグメントイオンを生成します。この開裂は無秩序に起こるのではなく、それぞれの化合物に特有であるため、質量スペクトルは化学構造を良く反映しています。

化学イオン化法(CI法)

 イオン源に反応ガス(メタン、イソブタン、アンモニアなど)を送り込み、電子衝撃イオン化をすると反応ガスイオンが生成します。この反応ガスイオンと試料分子との間でイオン分子反応が起こり、(MH+)や(M・NH4+)などの擬分子イオンが生成します。この擬分子イオンは内部エネルギーが低いために比較的安定でほとんどフラグメントイオンに開裂せず、試料分子の分子量を反映しています。

分析管

 分析管にもいくつかの方式がありますが、良く用いられているものに単収束磁場偏向型と四重極型の二つがあります。

単収束磁場偏向型

 一様な磁場(H)中をイオンが通過すると、そのイオンの質量(m)、電荷(z)、速度(v)と磁場の強度(H)によりそのイオンの軌道は進行方向に偏向を受け円弧を描きます。その軌道の曲率半径が分析管の曲率半径(r)と一致したイオンだけが分析管を通過し、イオン検出器に到達します。イオンの加速電圧を(V)とおくと、イオンは

で決まる運動エネルギーを得ます。 また、磁場中を通過するイオンの軌道半径(r)は

で表されます。
 この2つの式からvを消去すると、

となります。
 この式より、磁場の強度または、イオンの加速電圧を連続的に変化させることによってイオンをm/zによって分離できることがわかります。 単収束磁場偏向型分析管

四重極型

 平行に配置した4本の電極(四重極)の対向する電極を対にし、それぞれに+−の直流電圧に高周波電圧を重畳したものをかけると電極内に電場が作られます。この電場中を荷電粒子が進むとき進行方向に対して直角方向の力を受けます。直流電圧(U)、高周波電圧(V)、周波数(f)、電極の間隔(r)がある条件のとき、次式を満たす質量電荷比を持ったイオンのみが分析管を通過する事ができます。

 この式より、U/Vを一定に保ちながらVを連続的に変化させることによってイオンをそのm/zによって分離できることがわかります。
 また、このマスフィルターとも呼ばれる四重極型の質量分析装置は動作圧が10-4Torrと磁場偏向型(10-5〜-6Torr)に比べて高いことからガスクロマトグラフとの結合に適しています。

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Last Updated 2005/6/20