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第69回実験実習支援センターセミナー


ヒトSOD1のCys111残基の酸化とそのALS病態への関与

演 者

藤原 範子(兵庫医科大学生化学講座)

日 時

平成20年11月21日(金)14:00 〜

場 所

基礎研究棟2階 教職員ロビー

講演要旨

 スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)は生体にとって有害なスーパーオキシドラジカルを過酸化水素と酸素に変換する抗酸化酵素で、酸化ストレスから生体を守る重要な役割を果たしている。ヒトでは3種類のSODアイソザイム(Cu/Zn-SOD、Mn-SOD、EC-SOD)が存在する。Cu/Zn-SOD(SOD1)遺伝子の変異が家族性筋萎縮性側索硬化症(FALS)を引き起こすことが1993年に明らかとなって以来、153アミノ酸のうち110種類以上もの変異が報告されているが、その発症機構は未だ明らかではない。変異SOD1を過剰発現させたマウスではヒトALS様の病理所見を示すのに対し、SOD1欠損マウスでは神経変性症状が見られないことから、SOD活性とは無関係の「gain of toxic function」として多くの仮説が提案されてきた。特にFALS変異SOD1は構造が不安定で凝集化を起こしやすいことから、神経変性疾患に共通のコンフォメーション病として位置づけされている。SOD1はスーパーオキシドラジカルを消去する酵素であるが、SOD1自身も酸化されやすく、その酸化によって凝集化を引き起こすことが報告されている。ヒトSOD1はシステイン残基を4つ有しているが、Cys57とCys146は分子内S-S結合をしており、Cys6とCys111はフリーのまま存在する。Cys111はSOD1分子の外側にあるGreek key loop内に位置することから反応性の高いアミノ酸残基であることが予想される。我々はこのCys111がCys-SO3H(システイン-スルフォン酸)にまで酸化修飾されることを証明し、Cys111-SO3Hに酸化されたSOD1のみを認識する抗体(anti-C111ox-SOD1)を開発した。本セミナーでは、Cys111の酸化に関する知見を中心に、ALSの病態における酸化ストレスおよび酸化型SOD1の関与について概説したい。

分子神経科学研究センター神経遺伝子解析分野 共催


このセミナーは大学院の講義として認定されています。

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Last Updated 2008/11/5