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第71回実験実習支援センターセミナー


アルツハイマー病イメージング用プローブの開発

演 者

工藤 幸司(東北大学未来医工学治療開発センター教授)

日 時

平成22年2月8日(月)16:00 〜

場 所

基礎研究棟2階 教職員ロビー

講演要旨

 アルツハイマー病(AD)における病理像としてのアミロイドβ蛋白(Aβ)を追跡するアミロイドイメージングは高い感度および特異度をもって同病を診断できるとともに、いわゆる万能的診断法であろうと多くの研究者が想定していたことは確実であり、演者らもそう考えていた。 しかし臨床研究が進むにつれ明らかにされたことは、我々が抱いていた期待の全てをこのイメージング法が叶えてくれるものではなかったことである。それらを 代表的PETプローブ[11C]PIBを例に説明すると、以下の通りである。
 まず第1に重症度(ないしは進行度)診断が不可能であること、言い換えるとMMSEなどの臨床的認知症尺度との間に相関関係がみられないことが挙げられる。
 次にプローブによって差はあるがかなりの偽陽性者が見られるという問題である。2008年7月ADNI(Alzheimer’s Disease Neuroimaging Initiative)meetingにおいて健常高齢者の53%が[11C] PIB陽性であったという驚くべき報告がなされた。
 さらに2008年7月Holmesらによって「ワクチン療法により脳内Aβを完全に除去することができても、認知機能の低下は全く食い止めることができなかったこと、さらに神経原線維変化(過剰リン酸化タウ、以下タウ)の蓄積度はすべて最終Stageまで進行していた」ことが報告された(Lancet. 372.2132-2142.2008)。
 これらのことは、ADの重症度診断はAβを追跡するよりも、タウを追跡する方がより妥当性が高いことをも強く示唆している。また演者らはMCI(軽度認知障害)およびAD発症に関して「Aβには閾値はないが、タウには閾値がある」と推測している。
 演者らは現在、数年以内のヒト探索的臨床研究実施を目指してタウイメージング用PETプローブの開発に取り組んでいるが、講演では我々の研究の現状を紹介するとともに、併せて同イメージング用近赤外線蛍光プローブについても言及したい。

分子神経科学研究センター神経難病診断学分野・実験実習支援センター 共催

このセミナーは大学院の講義として認定されています。

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Last Updated 2010/1/20