本多 祥子(東京女子医科大学医学部解剖学教室講師)
平成24年5月14日(月)16:00 〜
基礎研究棟2階 教職員ロビー
私共の研究の目的は、記憶形成に関わる神経回路網の全貌を形態学的に解明することにより、脳における記憶情報の流れを明らかにすることである。側頭葉の海馬周辺皮質領域は、記憶形成・学習に不可欠な脳領域として、またてんかんやアルツハイマー病での重篤な障害部位として注目されるが、前海馬台を含む幾つかの領域については神経結合関係の解析が十分なされていない。そこで、基本モデルとしてラットを用い、@まず従来の標識物質注入法を用いて前海馬台領域全体の線維連絡を各層・部位レベルで明らかにする A更に近年開発されたウイルスベクター注入法を用いて、単一神経細胞の突起形態観察により前海馬台領域の入出力結合を細胞レベルで解明する という方針で研究を行っている。現在、辺縁系が比較的発達しているウサギにも着目し、ウサギ前海馬台の神経結合関係の解析も行っている。今回は実際のデータや写真を紹介しながら、神経結合関係の解析の流れをお話ししたい。更にラットでは、海馬体への主な情報入力源である嗅内野領域を人工的に傷害すると、反対側海馬体への入力線維が劇的に増加する現象(神経再支配)が知られており、記憶障害の自然回復に繋がる重要な変化と考えられているが、そのメカニズムは全く解明されていない。神経細胞レベルでどのような形態変化が起きているのかを明らかにするために近年研究を開始したところであり、これについても試験的なデータを含めて紹介したい。
滋賀医科大学解剖学講座・実験実習支援センター 共催
このセミナーは大学院博士課程の講義として認定されています。 |
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Last Updated 2012/4/2