三輪 高喜(金沢医科大学医学部耳鼻咽喉科学教授)
平成25年5月28日(火)17:00 〜18:00
基礎研究棟2階 教職員ロビー
匂いの受容が嗅神経細胞に存在する受容体によりなされることが推定されたのは,1970年代のことである。そのきっかけとなったのが,Gタンパク質の発見であり,Gタンパク質共役型受容体の関与を示す証拠が数多く得られていたが,それを決定づけたのは 1990年代初頭のRichard AxelとLinda Buckによる匂い受容体をコードする遺伝子の発見である。その後,20年足らずの瞬く間に解明が進んだ。この間,1994年にGタンパク質を発見したAlfred G GilmanとMartin Rodbelが, 2004年に匂い受容体遺伝子を発見したRichard AxelとLinda Buckがそれぞれノーベル医学生理学賞を受賞し,昨年は山中伸哉教授の陰に隠れた感はあるものの,Gタンパク質共役型受容体を発見したRobert LefkowitzとBrian Kobilkaがノーベル化学賞を受賞した。嗅覚受容はこの3つのノーベル賞級の発見と,それを発展させた研究成果により解明されたといっても過言ではない。一方,嗅覚障害に関する臨床は,他の聴覚,視覚などの研究と比較すると立ち遅れている。しかし,嗅覚受容の解明により嗅覚障害の病態の解明が進むとともに,神経細胞としては特異な嗅細胞の再生機構の研究の進歩により,嗅覚障害の治療に関しても多少の進歩は得られている。今回の講義では,匂い受容と伝導のメカニズム,嗅細胞の再生と神経成長因子との関係,そしてそれらが教えてくれた嗅覚障害に対する病態と治療に関して解説する。基礎医学と臨床医学のキャッチボールの重要性をご理解いただければ幸いである。
滋賀医科大学解剖学講座・実験実習支援センター 共催
このセミナーは大学院博士課程の講義として認定されています。 |
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Last Updated 2013/2/8