私たちの研究室でよく使われてきた発現ベクターは、当初はpEZZ(Pharmacia)、ついでpMAL(New England Biolabs)、 そして最近は、pQE30(QIAGEN)を用いることが多い。pEZZは、protein AのZZ regionとの融合タンパクを発現し、IgGアフィ ニティクロマトグラフィーで発現タンパクを精製する。融合タンパクは水溶性になりやすく、培養液中にも分泌されることが多い。 そのため、精製の操作は比較的簡単である。しかしながら、pEZZはタンパク発現の誘導を行うことができず、発現量が少ないことが 最大の欠点である。我々のデータでは、1L培養して平均100 _gの融合タンパクしか得られなかった。その点、pMAlおよびpQE30は、 IPTG添加によりタンパク発現を誘導することができる。発現タンパク量もpEZZの10倍以上である。pMAlはマルトース結合タンパク との融合タンパクを発現し、レジンを用いたアフィニティクロマトグラフィーで発現タンパクを精製する。融合タンパクをFactor Xaで 処理することにより、目的のタンパク・ペプチドを分離・精製可能である。しかし、このFactor Xaで処理、分離・精製の過程で、 かなりの量の発現タンパクを失うことも良く経験した。pQE30は、いわゆるHisタグタンパク(6xHis-tagged protein)で、目的と するタンパクのN端側に6個のHisを加えたタンパクを発現させる。また、c端側にHisタグを加えるタイプ販売されている。いずれも、 Ni-NTA agaroseを用いたアフィニティクロマトグラフィーで発現タンパクを精製する。このHis タグは、タンパクの構造や機能に 与える影響が極めて少なく、Hisタグを切り離す必要がなく、Ni-NTA agaroseを用いたアフィニティクロマトグラフィーによるOne s tepの精製で十分だというのが、うたい文句である。
前へ | 先頭へ |
Last Updated 2005/8/8