SNPs(スニップス,一塩基多型)のSNAPShotキットを用いた解析
生化学第二講座 上山久雄
ヒトゲノムの塩基配列がほぼ明らかになった.これからの遺伝子研究の方向の一つとしてその多型と表現型との相関解析がある.
遺伝子多型とは:
ヒトの遺伝子には個人による塩基配列の違いが存在する.その違いはプロモーターやイントロンにあったりコーディング領域にあったりするが,前2者は遺伝子の発現量が個人によって異なることに,後者は遺伝子産物の活性が個人によって異なることに繋がる可能性がある.表現型の個体差は遺伝子多型の組合せで決まるとも考えられるわけである.SNPsはsingle nucleotide polymorphismsの略で,発音は「スニップス」,訳すと「一塩基多型」である.
- 多型を示す遺伝子とそれに関連する表現型の例:
- シトクロムP-450 − 野性型ホモはタバコを喫っても肺癌にならない?
- ドパミンβ-ヒドロキシラーゼ − GTの繰り返しが多いと高血圧?
- β3-アドレナリン受容体 − T→Cで太り易くなる?
- ビリルビンUDPグルクロン酸転移酵素 − TAの繰り返しが多いと黄疸?
- 5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素 − T→Cで癌になりにくい?
- 組織性カリクレイン − プロモーターの塩基配列差が血圧に影響?
- アポリポタンパク質E − ε4のホモはアルツハイマー病になり易い?
SNPs解析は,制限酵素法,SSCP(single-strand conformation polymorphisms)解析法,あるいは直接シーケンシング法でも行えるが,本講義では,SNAPShotキットと蛍光自動シーケンサーを用いた方法を解説する.
本方法は,多型を示す塩基の直前までのプライマーを用意し,蛍光色素を結合した4種のジデオキシヌクレオシド三リン酸(それぞれ蛍光色素が異なる)とDNAポリメラーゼを用いて一塩基だけ伸長させるものである.1検体あたり30分とシーケンシングよりも処理速度が優れ,プライマーの長さを変えることにより複数点の同時解析も可能である.また,本方法は蛍光強度も測定するので定量的解析(遺伝子数を求めたい時など)にも用いることができる.
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Last Updated 2005/8/17