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発生工学実験法


原口 清輝  (微生物学講座)

 「発生工学」とは、生物の発生現象を実験的に操作、改変することにより、個体レベルでの解析を可能にする手法である。そしてその必然の成行きとして有用動物の生産へとつながる場合がある。発生工学実験における特色は、“実験的に操作した胚を仮腹雌(recipient)に移植して発生させる”ということである。
 それではどこからどこまでが発生工学実験なのか?例えばトランスジェニックマウス作製を例にとると、“受精卵の前核にインジェクションピペットを挿入してDNAを注入する場面”、同様にノックアウトマウス作製に関していえば“ターゲティングベクターの作製”、“桑実胚や胚盤胞期胚にES細胞を注入する場面”といったことは誰でも容易に想像がつく。しかし、当然これだけでは発生工学実験は成り立たたない。例えば、“胚を得る“ということ自体がひとつの技術であることを忘れてはならない。研究者がある遺伝子についての機能解析を行うために、遺伝子改変マウスの作製を考えているとする。その時に何をどこまでやらなければならないのか、発生工学の分野に携わったことのないヒトが分からないのは当然である。当日のセミナーでは、こういった点を踏まえてできるだけ詳しく、分かりやすく説明したい。
 ところで、遺伝子導入マウス(トランスジェニックマウス)と遺伝子破壊マウス(ノックアウトマウス)を総称して遺伝子改変マウスとよぶ。1980年、Gordonらによって世界初の遺伝子導入マウスが報告された。それからおよそ10年後の1990年代は、ES細胞の樹立に伴い、ノックアウトマウスによる個体レベルでの解析法が盛んになり、現在でも個体レベルでの遺伝子機能解析法としてはこれが主流になっている。膨大なライン数を作製しても表現型がなかなか現れないトランスジェニックマウスに対して、ノックアウトマウスの場合は目的遺伝子の機能欠損による表現型が劇的な場合がある。しかし、トランスジェニックマウスでしかできない研究も多く、アイデア次第でこれらの組み合せはますます重要になると思われる。


 本セミナーでは、マウスを中心に以下についての講義を行う予定である。

  • トランスジェニックマウスの作製から解析まで。
  • ノックアウトマウスの作製から解析まで。
  • トランスジェニック手法を用いた実験(エンハンサー解析、目的遺伝子のノックダウン)。
  • マウス以外の動物における発生工学研究の現状。

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Last Updated 2005/6/22