礒野 高敬 (実験実習機器センター)
タンパク質の解析技術は、20世紀からの生化学の最盛期とともに進歩を遂げてきた。
また、ヒトゲノム解析がほぼ終了した21世紀においては、ポストゲノム、正しくはポストシーケンス時代の手法として
更に重要性が増している。そのなかで、プロテオミクス、プロテオーム解析が注目されている。プロテオームとは、
細胞内の全遺伝子を意味するゲノムに対して、細胞内の全タンパクを示す言葉として作られたものである。
遺伝子はタンパク質をコードしている暗号であり、実際の細胞内で働くのはタンパク質である。また、翻訳されたタンパク質は、
その後、糖鎖の付加や切断などの修飾を受けてから実際に機能する。この実際に機能している全タンパク質の
全体像をつかもうというのが、プロテオーム解析である。プロテオミクスとは、ゲノミクスに対する言葉であるが、
従来の個別のタンパク質の解析とは違い、プロテオーム解析に見られるようにゲノム情報を基礎にして系統的にかつ
網羅的にタンパク質を扱う技術、方法論である。
プロテオーム解析は、二次元電気泳動法により、全タンパクを展開し、各スポットを切り取り、トリプシン等の
プロテアーゼを用いてゲル内の中でタンパク質の消化を行い、消化されたペプチド断片の分子量を、飛行時間型質量分析計
(TOF-MS)等で測定し、遺伝子バンクのデータに基づきどの遺伝子の産物かを決定していく方法が一般的である。
この解析方法の基本的な手法を本講義で紹介する。また、演者が実際に行っている実施例を紹介して、これらの技術を
用いてどのような研究が出来るのかを解説する。
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Last Updated 2005/8/5