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サルES細胞と再生医学研究 一発生工学的手法の活用−


鳥居 隆三  (動物生命科学研究センター)


サルES細胞、発生工学、体外受精、顕微授精、核移植

 サル類の医学研究への活用と自家供給体制を整備すべく、室内での計画的繁殖と実験動物化の検討を行っている。その中で数年前より体外受精法、顕微授精法、体外培養法、胚移植法等の発生工学的手法の開発を行い、ニホンザルでの体外受精一胚移植法、カニクイザルでの顕微授精一胚移植法についてそれぞれ確立した。さらにこれら発生工学的手法の応用と体外培養法の開発により胚盤胞期胚の作製に成功し、ここからカニクイザルとニホンザルの胚性幹細胞(Embryonic stem cell:ES細胞)株の樹立に成功した。(図−1)ここでは、ES細胞の分離・樹立に至る具体的な方法とその意義、さらに4月から発足する動物生命科学研究センターにおける再生医学研究に向けたサルES細胞の活用と最新の成績を述べたい。
図1
1.サルES細胞の樹立の必要性
 ヒトES細胞から分化・誘導して作り出される機能細胞を移植する再生医療は、パーキンソン病、アルツハイマー病、糖尿病等の難治性疾患の治療法として、また心臓、肝臓等の臓器移植に替わるものとして期待されている(図−2)。しかしヒトに臨床応用するまでには、ES紬胞から機能細胞への効率よい分化・誘導および選別法の開発が求められ、さらに in vivo での生着と機能発現や安全性の確認など、基礎的な実験研究を十分に行う必要がある。その為には、現在用いられているマウスES細胞ではなく、よりヒトに近い種のES細胞が必要であり、実験用動物の中で最もヒトに近似する種であるサル類のES細胞株の樹立が必要になる。事実、ヒトES細胞はサルES細胞と比べて形態、培養条件、マーカー分子の発現パターンなどはほぼ一致しているのに対して、マウスES細胞とは胚体組織や胚体外組織の構造などの胚発生の過程が異なるところに起因すると思われる差異が多くある。
図2
2.実験用サルの新たな有用性に向けた品質の向上(図−3
 現在医学実験用に用いられているサル類は、野生由来のニホンザルや、外国からの輸入に依存しているカニクイザル、アカゲザル等であるが、それらは遺伝的な統御や微生物学的統御は十分になされていない状態にある。従って各種実験成績の精度や再現性は極めて低く、人獣共通感染症の危険性も高い。体外受精法、顕微授精法、体外培養法、胚移植法等の発生工学的手法は、これら遺伝学的、微生物学的統御を可能とし、室内での人工繁殖による計画的な生産を行うことにより、医学研究用実験動物としてのサルを提供できる。本研究センターは、室内での計画的な人工繁殖を行い学内研究用個体を賄うことを一つの目的として本年4月に誕生した。今後、実験段階から生産段階へ進み、最小限の個体で最大限の成果を得られるように、品質の高いカニクイザルを作製する予定である。
図3

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Last Updated 2005/8/5