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クローン技術の現状と応用


若山 照彦(理化学研究所神戸研究所発生・再生科学総合研究センター
ゲノム・リプログラミング研究チームチームリーダー)

近年、核移植技術の発達により完全に分化した体細胞からもクローン動物を作ることが可能になった。 しかしその成功率はどの動物種でも非常に低く、たとえ生まれてきても奇形や呼吸障害などですぐに死んでしまう場合が多い。 この低い成功率と高い死亡率の改善を目的として、これまでに我々は様々な方法でクローンマウスを作出してきた。 その結果、クローンの成功率はドナーマウスの遺伝的背景に影響を受けること(雑種の方が近交系よりも成績がいい)、 レシピエント卵子には受精卵よりも未受精卵の方が適していること、および核移植のテクニックが完成されていないことなどに 原因があることがわかってきた。一方、作出したクローンマウスを解析した結果、老化の指標となるテロメア長は、 たとえクローンからクローンを作ることを数回繰り返しても短くならないことや、行動や繁殖能力には異常が見られなかった。 しかし全ゲノムのDNAメチル化パターンおよびgene chipによる遺伝子発現を調べたところ、ドナーとクローン間だけでなく クローンとクローンの間にも多数の違いがあることや、肥満や肝炎により早死にする個体が多いことなどから、クローンはドナーと 同じDNAを持っているにもかかわらず、ドナーの完全なコピーではないことがわかってきた。これらの原因は、分化している体細胞の 核を未分化な状態に戻すための核の初期化が不十分であるためなのか、あるいは大部分の体細胞にはすでに異常が生じており、 たまたま正常な体細胞を選んだ場合にだけ成功するという可能性が考えられる。一方、核移植によって作出したクローン胚を 培養し続けると、約1割の胚は体細胞由来の核移植ES細胞(ntES細胞)として樹立することが出来る。我々はこの方法で様々なマウスの 尻尾からntES細胞を作出し、その性質が受精卵由来のES細胞と何ら遜色の無い物であること、及びそれらの細胞株を培養条件下で 神経細胞や心筋細胞へ分化させることにも成功した。ntES細胞はドナー自身の体細胞から作られる拒絶反応の起こらない細胞であり、 再生医療への貢献が期待されている。本講義ではマウスのクローンの現状と問題点に関して、現在までにわかっている知見を紹介する。

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Last Updated 2005/6/22