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NMRを用いた撮像法の原理

森川 茂廣(MR医学総合研究センター)


 MR画像は、日常的に臨床の場で使われ、様々な疾患の診断のみならず、手術の画像ガイドとしても利用されている。MR画像は、生体内に最も多く存在する水プロトンのNMR信号を3次元空間内のポイントごとに検出し、それらを正しくもとの場所に配列することにより構築される。この局在化は、傾斜磁場を用いて、スライス選択、位相エンコード、周波数エンコードなどの技法により行なわれる。こうして局在化された水信号は、その存在量、磁化に対する緩和時間などの要素によってコントラストを形成したMR画像が得られる。 X線CTは、X線の吸収に基づいてコントラストが決定されるのに対し、MR画像はT1強調、T2強調、プロトン密度強調など撮像条件により、異なるコントラスト、場合により反転するコントラストを得ることができる他、水分子のmotion、perfusion、diffusion、温度など様々な情報の画像化も可能である。 本講義では、このように多様な情報を有するNMRをこれからの研究に活用できるよう、基本的な撮像法の原理とコントラストについて概説する。

I.局在化のための基本原理
1)RFパルス
 現在広く用いられているパルスフーリエNMR法ではラジオ波をパルスとして短時間照射し(RFパルス)、静磁場内に置かれた核スピンの熱力学的平衡状態を乱し、そこから再び平衡状態に戻って行く過程(緩和)を観測して信号を検出している。 まずNMR信号の基本原理である核スピンの基本的なふるまいを論ずるとともに、このRFパルスの原理、核スピンの巨視的磁化に対する効果、フリップ角と観測される信号の関係、パルスの形状とMR画像で用いられる周波数選択パルスの原理などについて述べたい。

2)勾配磁場
 マグネット内部では、静磁場強度は高い均一性を保つよう調整され、こうした均一な磁場環境では、水のMR信号は、ある特定の周波数で観測される。 しかし、こうした静磁場磁石だけではMR画像は撮像できない。画像装置には、勾配磁場コイルが装備され、静磁場強度に比べるとはるかに低いが、3次元空間座標軸に沿って直線的に強度が変化する勾配磁場が撮像プログラムの中で様々なタイミングで加えられている。 勾配磁場をかけながらこの周波数選択パルスを 加えることにより、一定の厚さのスライスを選択することができ(slice)、RFパルスを加えてから、信号を観測するまで の間に、一定時間だけ勾配磁場をかけると、位置に依存して信号の位相が変化し(phase)、勾配磁場をかけながら信号 を観測すると、位置情報を周波数情報として検出することができる(read)。このslice、phase、readを3軸方向に適用 することにより、3次元空間内の位置を区別した水信号を得ることができる。こうした局在化の原理を概説し、勾配磁 場強度と得られるMR画像の関係の理解を図る。

II.基本的撮像法と画像のコントラスト
 基本的なMR撮像法であるスピンエコー法、グラディエントエコー法について、その構成要素、エコー信号を結ぶ原理 とともに、それぞれの方法の共通点と相違点、特徴について述べる。また、RFパルスからエコー信号を得るまでの時間 (エコータイム、TE)、RFパルスを加える間隔(繰り返し時間、TR)、RFパルスの強度(フリップ角)が画像信号に及ぼす 効果を具体的な画像をもちいて述べ、いかにして横緩和時間(T2)、縦緩和時間(T1)プロトン密度を強調した画像の コントラストが得られるかを解説する。
図1

III.特殊な撮像法
1)ケミカルシフトイメージング(CSI)
 一般的なMR画像は、水の信号が用いられているが、水以外の1Hの化合物、あるいは1H以外の31P、13C、19Fなどの 核種の化合物の画像を構築することができる。上述のphase encodingを用いて2次元、あるいは3次元空間内のマルチボクセル に対応するNMRスペクトルを得ると、化合物ごとに特有のケミカルシフトを有する信号として区別して検出されるので、 化合物に固有の画像を構築することができる。例えば、31P-CSIを利用すれば、クレアチンリン酸、ATP、無機リン酸などの 化合物の含量やその比率を表わす画像、無機リン酸のケミカルシフトから得られる細胞内のpHを表わす画像などを構築する ことができる。これらの撮像法について実例を用いて供覧する。
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Last Updated 2005/8/8