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タンパク質研究へのTyphoon活用法

礒野 高敬(実験実習支援センター)

 実験実習支援センターのタンパク工学実験室に設置してあるバリアブルイメージアナライザーTyphoon9200(GEヘルスケアバイオサイエンス、図1)の活用法を、演者が行っているタンパク質研究での使用例を紹介しながら解説する。

図1

図1

 Typhoonは、Strage Phosphor・Chemiluminescence・Fluorescenceの3つのモードでゲルやメンブラン等を測定できる装置である。

Strage Phosphorモード

 Strage Phosphorスクリーンを用いて、RIを検出する時に用います。
 ノーザン解析やサザン解析に用いられます。演者は、このモードでは利用していませんが、X線フィルムより感度がよく、10〜100分1の時間で検出できます。また、Typhoon全体にいえるのですが、ダイナミックレンジが5桁も有り、定量するのに有効です。

Chemiluminescenceモード

 ECLなどの化学発光を検出する時に用います。
 支援センターでは、化学発光を検出する専用の装置としてImageMaster-CL(GEヘルスケアバイオサイエンス)を設置しており、検出装置としてはこちらの方が優れていると思いますが、演者は、コンピューターの操作性と慣れでTyphoonを用いています。
 演者は、Immunoblot解析において、定性的解析には、ECLを用いて、支援センターの自動現像装置を用いてX線フィルムに焼いていますが、定量的解析を行う時に、ECLplusで発光させTyphoonを用いて測定しています。

<実施例1>
 われわれは、頻拍誘導性心不全イヌモデルを用いて、正常(Normal)左心室心筋と慢性心不全(CHF)左心室心筋とのプロテオーム解析により、慢性心不全心筋においてHSP20の発現が上昇することを見つけた(J. Cardiac Failure 2006)。今回、心不全治療薬(Drug1, 2)によりHSP20の発現がどのように変化するかを調べた(図2)。抗HSP20抗体と抗Tubulin抗体(対照)を用いてImmunoblotした後、ECLplusで発光させTyphoonを用いて測定した。このイメージを附属の定量ソフトImageQuantで定量した。心不全治療薬群では、慢性心不全群より更にHSP20の発現が上昇するという結果が得られた。

図2

図2

Fluorescenceモード

 蛍光を検出する時に用います。用いる蛍光試薬により、励起レーザーとフィルターをメニューから選択して行います。Typhoon9200は、532nmと633nmのレーザーのみで、457nmと488nmの短波長側のレーザーがないので、Cy3やCy5などの長波長側の蛍光試薬は測定できますが、Cy2などの短波長側の蛍光試薬は測定できません。
 演者は、主に、二次元電気泳動およびSDSポリアクリアミド電気泳動のゲルの染色に蛍光試薬を用いたイメージ解析にTyphoonを使用している。イメージ解析だけであれば、Deep Purple(GEヘルスケアバイオサイエンス)やFlamingo (Bio-Rad) などの蛍光試薬も用いているが、イメージ解析後、ゲルを切り出し、質量分析に用いる時は、高価ではあるが、SYPRO Ruby (Invitrogen) を用いている。演者の所有するInvitrogen製のイルミネータSafe Image が、SYPRO Ruby用に作られていて、Typhoonとほぼ同等のイメージが得られて、興味あるスポットを切り取るのに好都合であるので、SYPRO Rubyを常用している。
 

図3

<実施例2>
 最近、栄養およびストレスのセンサーとして、タンパク質のO-GlcNAc修飾が注目されてきている。それゆえ、心負荷誘導され、かつ、心負荷により糖代謝が亢進すると考えられている心不全において、タンパク質のO-GlcNAc修飾の関与が考えられる。抗O-GlcNAc抗体を用いた免疫沈降法により、不全心筋タンパク質のO-GlcNAc修飾を調べた(図3)。沈降したタンパク質を電気泳動したゲルをSYPRO Rubyで染色してTyphoonでイメージを取得した。Safe Image上で、ゲルからバンドを切り出し、in gel digestion(付録のファイル参照)した後、支援センターのLC/MS/MS(LCQ : Thermo Fisher)でタンパク質の同定を行った。その結果、糖代謝やストレスに関連するタンパク質が不全心筋でO-GlcNAc修飾の亢進を受けていることが示唆された。
                       

図3     

 演者は、Fluorescenceモードでこの他にも活用を試みている。Deep Purpleは、転写したPVDFの染色にも使えるので、免疫沈降を行った時に、Immunoblot解析の前に、転写されたタンパク質を検出するのに用いている。また、ECL Plex (GEヘルスケアバイオサイエンス)は、Cy3とCy5でラベルされた二種類の二次抗体を混合して、一度にリン酸化されたタンパク質Aと全タンパク質Aを染め分けて定量で切るシステムである。二次抗体が化学発光系より沢山いる欠点があるが、定量性はよさそうである。また、Cy3とCy5にタンパク質を染め分ける方法として2D DIGE法などがあるが、それようのソフトが必要で、現状では使用できない。

 本講義では、上記の説明の後、イメージの取得法や定量法を、実際にTyphoonを操作して説明を行う。

付録のファイル


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Last Updated 2007/8/6