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遠心機の利用法

洲崎 雅史(実験実習支援センター)
岡本 良平(    〃     )
漆山 昇 (    〃     )
小山由起子(    〃     )

 遠心機は、生化学研究、特にタンパク質や遺伝子の解析を行う実験において、試料の調整等、実験の基礎的な部分で多用される装置です。
 最近、遠心機の間違った使用方法に起因すると見られる故障や事故が多く発生しています。
 この実習では、これから支援センター内の遠心機(分離用超遠心機、卓上超遠心機、高速冷却遠心機)の利用を予定している方や、すでに利用されている方を対象に、遠心機を安全に、効率良く使っていただくための正しい取り扱い方を、実際に遠心機を操作して体験していただきます。

遠心機について

 遠心機は、試料を高速で回転させ、その時得られる遠心力を用いて、試料を密度の差で分離するための装置で、試料に遠心力をかけるためのローターとそれを回転させるための駆動部よりなっています。そして、安全確保のため回転部は丈夫なチャンバー内に収められています。
 遠心機には、低速遠心機、高速冷却遠心機、分離用超遠心機等があり、また、ローターにも固定角ローター(Fixed-angle rotor)、水平ローター(Swinging-bucket rotor)、急速密度勾配で短時間で分離するのに用いる垂直ローター(Vertical tube rotor)などがあり、それぞれのローターには、容量、最高回転数が決められています。実験の目的に合わせて最適なものを選択する必要があります。

遠心機の種類

低速遠心機
最高回転数3,000rpm程度の遠心機で、試料中の比較的大きな粒子(培養液中の培養細胞や、血球等)の分離に用います。試料を冷却できるものもあります。
(日立CF-7D2、ベックマンGPR)

高速冷却遠心機
最高回転数20,000rpm程度の遠心機です。試料の温度が空気との摩擦熱で上昇しないように強力な冷却機を備えています。冷却の必要な試料や、低速遠心機では分離できない粒子の分離に用います。ローター室内を減圧(0.5気圧程度)するものもあります。
(ベックマンJ2-21、J2-21/ME、HP-25、HP-26)

分離用超遠心機
最高回転数が数万rpmの遠心機で数十万gの遠心力を得ることができます。ローターを非常に高速で回転させるのでローター室内を高真空に保つような仕組みになっています。この遠心機は、強大な遠心力を必要とするようなミクロソームや、リポタンパク質等の分離に用います。微量試料を迅速に遠心できる小型のものもあります。
(ベックマンL7-65、TL-100、Optima TL)

ローターの種類

図4

固定角ローター(アングルローター)
通常の遠心分離にはこのローターを用います。
アングルローターには、色々な種類(駆動軸に対する遠心管の角度や容量)があるので目的に応じたローターを選ぶことが必要です。

水平ローター(スウィングローター)
図5
このローターは遠心管を挿入したバケットがローターの回転と共に遠心方向にスウィングし、水平になるものです。バケットは常に遠心力の方向に向いているので、試料が舞い上がったり密度勾配が乱れたりしないため、主に密度勾配法による遠心分離に使用します。

遠心管について

 遠心分離を行なう試料は遠心管と呼ばれる容器に入れます。遠心機やローターに色々な種類があるように、遠心管にも色々な種類(材質、形状)があります。使用するローターに適合したもの(サイズ、耐荷重)を選ぶことは言うまでもなく、使用する溶媒への耐性や、滅菌の必要の有無などから判断し、適切なものを用いることが必要です。
 必ず純正品を使用してください!!

遠心機使用時の注意事項

 遠心機を使用するときには以下の点について注意してください。

  1. 遠心機に適合したローターを使用すること。
  2. ローターに適合した遠心管を使用すること。
  3. 亀裂やひび、傷のある遠心管は絶対に使用してはいけない。
  4. 試料は、必ずバランスを取り、ローターへは対称位置にセットする。
  5. ローターの最高許容回転数を厳守する。
  6. ローターが設定回転数に達するまで、遠心機のそばを離れない。
  7. 初めて遠心機を使用する場合や、取り扱いに不明な点のある場合は、前もって支援センターに連絡し、使用方法、注意事項等の説明を受けること。
  8. 必ず予約表に予約して使用し、他の利用者の迷惑にならないようにすること。予定が変更になったときは速やかに予約表を訂正すること。
  9. 使用後は、利用ノートに必要事項を記入すること。
  10. 実験終了後は、ローター室、ローター、実験台の上をきれいに掃除すること。
  11. トラブルが発生したときは、どんなに些細なことでもすぐセンターに知らせること。

高速冷却遠心機使用時の注意事項

 高速冷却遠心機を運転するときには、特に以下の点についても注意すること。

  1. 遠心機に適合したローターを使用する。
    Beckmanの遠心機には、Beckmanのローター。
  2. ローターを駆動軸に正しくセットする。
    ローターのピンを駆動軸のクラウンにはめ込むようにする。
    ローターカバーの中央のネジで駆動軸に固定する。
    (これを怠ると、必ずローターが駆動軸からはずれて遠心機を壊します。)
  3. 実験終了後は、ローター室、ローター、実験台の上をきれいに掃除する。
    塩類を使用した場合は念入りに洗浄してください。また、必要に応じて消毒も行なってください。
    (液漏れをおこしたときは、ローターだけでなくローター室も必ず洗浄してください。)

分離用超遠心機使用時の注意事項

 分離用超遠心機を運転するときには、特に以下の点についても注意すること。
図1

  1. 水平ローター使用時は、すべてのバケットをセットして運転すること。
    バケットをローターにセットする際はバケットの番号とローターに刻印されている番号を合わせて図のように正しい方向にセットしてください。
    (試料数が少ないときは、遠心管は入れずに空のバケットをセットしてください。) 図6
  2. 固定角ローターは、ローターカバーのシールを確実にすること。シールチューブを用いるときは必ずスペースキャップを使用してください。
    (スペースキャップを忘れると遠心管が破裂します。)
  3. ローターの最高許容回転数を厳守すること。ローターには寿命があり、最高回転数を制限しているローターもありますので、はり紙等の注意書きを良く読んでください。
    比重が1.2を超える試料を遠心するときには最高回転数を次式によって減じること。
    図2
    CsClを用いてIsopycnic法で遠心分離をするときはCsCl凝結曲線を参考にして最高回転数を決める必要があります。
  4. 予約表には使用を予定しているローター名も記入すること。予定が変更になったときは速やかに予約表を訂正すること。
  5. 使用後は、LOGBOOKに必要事項を記入すること。(ローターの寿命を管理していますので、必ず記入してください。)
  6. 実験終了後は、ローター、実験台の上をきれいに掃除しておくこと。

卓上型超遠心機使用時の注意事項

 卓上型超遠心機を運転するときには、特に以下の点についても注意すること。

    図3
  1. ローターを遠心機に正しくセットする。
    ローター上部のボタンを押し込んで、駆動軸にローターを固定してください。これを怠ると必ずローターが駆動軸からはずれ、非常に危険です。
  2. 使用後は、LOGBOOKに必要事項を記入すること。(ローターと本体の寿命を管理していますので、必ず記入してください。)
  3. 実験終了後は、ローター、実験台の上をきれいに掃除しておくこと。

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Last Updated 2008/7/31