小島 秀人(生化学分子生物学講座 分子遺伝医学)
科学技術の進歩ならびにバイオテクノロジーの発達により、これまで治療困難とされてきた病態に対して、全く新たな手法を用いて治療することが可能になってきた。今日、再生医学と呼ばれる領域である。再生医学は大きく分けて2つに分類できる。一つは細胞療法あるいは細胞移植療法と呼ばれる。未分化で増殖能を持つ幹細胞あるいは前駆細胞より、目的とする細胞・臓器を誘導し、移植することにより疾病の治癒を導く方法である。もう一つは遺伝子治療と呼ばれ、細胞内に外来遺伝子を導入し、細胞の持つ機能を修飾することにより、疾病の治癒を導く方法である。今日では両者を組み合わせた方法も動物を用いて盛んに研究されている。少なくとも現在対象となる疾患は、もっぱら、薬物や手術などの既存の方法にて治療困難な疾患である。しかし、将来、再生医学の手法が飛躍的に進歩した際には、薬物や手術などに代わって、現行の治療体系を根本的に変えてしまう可能性を有している。ただし、技術的な進歩が偉大であればあるほど、その使い方を誤るとマイナスの側面も想像を超えたものとなってくる。ヒトとしての倫理的な側面を大切に守ることがどれだけ重要であるかの自覚があってこそ、人類の進歩といえる。
本講演では、再生医学の2代手法を取り入れることにより、どのようなことが可能となるのか、また、どのようなことに配慮しなくてはならないのかについて私たちの研究を含めて解説する。
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Last Updated 2008/8/1