鳥居　隆三（動物生命科学研究センター）
土屋　英明（　　　　　〃　　　　　　）
寺門　一郎（　　　　　〃　　　　　　）

　医学研究のための動物実験を行う際には、動物愛護、福祉および生命倫理の観点にたち実験動物を適正に飼育し、取扱うことが基本である。本学では、動物実験を行う教職員、大学院生等全ての方を対象に我が国で初めての動物実験資格認定制度を平成１６年度から導入し、動物実験計画書は「動物実験委員会」による丁寧かつ厳しい審査、さらに動物の福祉、生命倫理の観点から「動物生命科学研究倫理委員会」による審査を行う等、動物実験に対しては慎重かつ厳格に対応している。平成１７年６月２２日には「動物の愛護及び管理に関する法律」改正が施行され平成１８年６月１日施行されたが、この改正の中で最も重要な点は、動物実験の３Ｒ (Replacement, Reduction, Refinement)が明文化されたことであり、動物実験を取り巻く環境は益々その厳しさを増し、適正な動物実験の遂行が強く求められてきている。これを受けて、平成１９年６月１日から施行された「滋賀医科大学動物実験規程」の中には、１）動物実験の最終責任者が学長になったこと、２）３Rの理念が明記されたこと、３）動物実験計画は学長が承認すること、４）動物実験は学長の承認を受けた動物実験室で行うこと、５）教育訓練が義務づけられたこと、６）自己点検・評価と情報公開を行うこと、等が新たに盛り込まれた。
　このような状況をふまえ、本講義ではこれから動物実験を実際に始めようとする大学院生を対象に、適正な動物実験を行うための正しい実験動物の取扱手技を教示する。すでに動物実験を行う予定の大学院生は、動物実験（基礎）資格認定のための教育訓練（講習会と資格認定試験）の受講と受験を終え、「動物実験（基礎）」の認定、即ち、マウスからイヌまでの動物実験を行える資格を有していると思われるので、ここではマウス、ラットを用いて動物実験を行うにあたっての、飼育室への入室からケージ交換、個体識別法、雌雄鑑別法、繁殖法、麻酔法、投与法、採血法等、具体的な取扱方法を、当センターで作製したビデオを用いて詳細に解説する。