TOPページに戻るサイト内を検索するサイトマップリンク
機器部門RI部門配置図セミナー産学連携学内向け
過去のセミナー支援センターセミナー支援センター特別講習会支援センターテクニカルセミナー支援センター交流会

医科学実験用ブタについて

内田 晃・中村 紳一朗(動物生命科学研究センター)

 

 医科学研究分野の大・中型実験動物として、これまでイヌが用いられることが多かったが、近年、ブタが利用される機会が増えてきた。実験動物として扱いやすいサイズへの品種改良が進んだことと、実験動物に対する倫理観の変化、そして実現可能な実験内容が増えてきたことが、大きな要因と考えられる。   家畜ブタの体重が200〜400kgなのに対し、実験動物として系統の確立されたミニブタの体重は50〜100kg、さらに最近では10〜20kgのマイクロミニブタがコマーシャルベースで利用できるようになってきている。しかし、残念ながらマイクロミニブタはまだ系統として安定しておらず、大型に成長する産仔もあり、供給も不安定なときがある。   人間がブタと共存するようになった出発点は食用であるため、他の動物に比べて倫理的な障壁が低い。この点は動物福祉への考えが厳しいヨーロッパ諸国で顕著であり、イヌからブタ利用へのシフトが進んでいる。
 ブタの実験利用としては、まず体の大きさが他の実験動物種よりも大型で、(ミニブタは)ヒトにも類似するため、小型げっ歯類では実現不能な外科手術を伴う実験(特に循環器系)、医療機器の安全性評価に用いられている。また体毛が短いというヒトと類似する特徴から皮膚科領域の実験にも用いられている。その他、医療機器開発での安全性試験、医療トレーニングなどにも用いられる。
 ブタでは、食肉処理で不要となった生殖器を利用できるため、発生工学的な手法が早くから確立されていた。そのため、受精卵および胚への遺伝子導入の取り組みも早くから行われており、すでにいくつかの遺伝子改変ブタが作製されている。また移植抗原に関連する遺伝子のタイピングも行われており、再生医療への応用が期待されている。このように従来のような限られた目的だけでなく、げっ歯類で得られた結果を、大型実験動物であるブタを用いてブラッシュアップできるよう、新たなトランスレーショナルリサーチにおける実験利用が展開されている。
 一方で、実験動物とはいえ、ミニブタ、マイクロミニブタもブタである。実験動物は微生物学的に統御されなければならない。口蹄疫はヒトへは感染しないが、その発生は実験コロニーに被害を及ぼすだけでなく、大学周辺の畜産業に多大な影響を与える可能性がある。現在ブタは、家畜のみならず実験動物、展示動物、伴侶動物であっても、家畜伝染病予防法に則った飼育管理が必要とされ、研究者の利用もこの法に従っていただく必要がある。
 本講義では、実験動物としてのブタの総論を説明し、実際の実験利用や将来性などについて紹介したいと思う。


前へ 先頭へ
Copyright (C) Central Research Laboratory. All right reserved.since 1996/2/1

Last Updated 2012/8/6