土屋 英明・中村 紳一朗(動物生命科学研究センター)
医学研究用の実験動物使用において、「大学」という機関の特徴はマウスが汎用される点である。また各大学において差はあるが、遺伝子改変マウスの使用が増加しているのも特徴であり、本学も同様の傾向にある。動物生命科学研究センター(以下、動物センター)で、最も飼育頭数ならびにユーザーが多いマウスの実験利用は、遺伝子組換えに関わる法、動物愛護と福祉の観点にたって策定されている滋賀医科大学動物実験規程を遵守し、実施していただきたい。
動物センターに導入されるマウスは微生物学的検査の結果が明らかでなければならない。汚染マウスが導入されると、他のマウスに汚染を拡げ、たとえ非病原性の病原体であっても、免疫学的な挙動の変化が実験結果に影響を与えることがある。重篤なアウトブレークは、飼育室あるいは施設単位での淘汰を余儀なくされる。最近は特殊な系統の遺伝子改変マウスが、実験動物繁殖業者ではなく、他の研究機関から導入されることが多く、また免疫不全のフェノタイプを持つ系統もあり、それらの場合は特に微生物学的基準のすり合わせに注意してほしい。
現在、マウス飼育室はすべて遺伝子組換えP1Aの封じ込めを施している。うち5室はバリアシステムで厳重な入退室を行っている。さらにABSL2および3レベルの感染実験室が各1室あり、それぞれP2AおよびP3Aの実験も可能となっている。
遺伝子組換えマウスが指定エリア外へ逸走、逸走措置を講じずにエリア外にいる状態は法に触れることになるので注意していただきたい。ケージ交換の際、不要な胎子が床敷きに紛れていないかなど、注意して確認いただきたい。
平成24年に「動物の愛護及び管理に関する法律」が改正され平成25年10月に施行された。これに伴い動物実験の3Rsは厳格化され、マウスの実験利用においても、より適正な動物実験の遂行が求められる。動物への苦痛を軽減するためには、適切な取扱い方法を身につけるとともに、適切な麻酔方法が必要とされる。本講義では、飼育室への入退室から、ケージ交換、個体識別法、雌雄鑑別法、繁殖法、麻酔法、投与法、採血法に至るまでの基礎的な手技に関して、当センターで作成したビデオを使用して詳しく説明する。その他、微生物学的基準、遺伝子組換えマウスを扱う際の注意点について説明する。
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Last Updated 2016/8/3