片岡秀夫、挾間章忠 病理学第二講座
免疫組織化学
免疫組織化学は組織、細胞の形態学的な観察および蛋白、酵素、ホルモン他機能的な証明が一度に行える手法であり、"構造"と"機能"の同時証明(観察)が可能である。
本法は抗原抗体反応の特異反応を基盤としており、抗原と結合した特異抗体の局在を酵素組織化学を用いて証明する。現在、重要な形態研究法として幅広く用いられているが、病理組織診断にも欠かせない検査法でもある。また、光顕レベルだけでなく電顕レベル(免疫電顕)にも応用可能である。
今回の実習では、現在最も一般的に用いられている streptavidin - biotin peroxidase complex (SABC) 法を行う。本法は微生物 (streptomyces avidinii) より分離された等電点 pH6.4 、分子量60,000 、のアビジン類似物とビタミンHとして知られるビオチンの間に形成される非常に強固かつ特異的な結合を利用した方法で、非特異的結合が少なく感度も優れている。
streptavidin - biotin peroxidase complex (SABC) 法
1. | 脱パラフィン後水洗 | (HE染色の項参照) | |
2. | PAP-PEN にて組織の周囲を覆う | ||
3. | PBS | 2分 | (重 要) "以後組織を乾燥させないように操作する" |
4. | 3%過酸化水素水 | 10分 | (湿潤箱内で反応) |
5. | PBS | 2X各3分 | |
6. | 10%正常血清 | 10分 | ( 同 上 ) |
7. | 一次抗体 | 60分 | ( 同 上 ) |
8. | PBS | 4X各3分 | |
9. | ビオチン化二次抗体 | 10分 | ( 同 上 ) |
10. | PBS | 3X各3分 | |
11. | 標識ストレプトアビジン | 5分 | ( 同 上 ) |
12. | PBS | 3X各3分 | |
13. | DAB solution | 5-10分 | (顕微鏡で反応を確認) |
14. | 水洗(流水にて5-6回水を変え洗う) | ||
15. | メチルグリーンまたはヘマトキシリンにて核染 | 30-60秒 | |
16. | 色だし(水道水を流しながら) | 5-15分 | |
17. | アルコール脱水、透徹および封入 | (HE染色の項参照) |
ヘマトキシリンエオジン (HE) 染色
染色法の中でもっとも普通にもちいられているのがヘマトキシリン・エオジン重染色法であり、本染色法がほとんどすべての染色の中心をなすものであって、病理組織学に絶対欠かせない染色法である。このほかに各種の染色法があり、目的の物質を染め分けるのに利用されているが、これらはすべてヘマトキシリン・エオジン染色の補助染色法とみてさしつかえのないものである。
A) 前処置:脱パラフィン(各種染色を行う前には必ず脱パラフィン操作を行う。)
1) | キシロール - I | 10分 |
2) | キシロール - II | 10分 |
3) | 100%エタノール - I | 1-2分 |
4) | 100%エタノール - II | 1-2分 |
5) | 95%エタノール | 1-2分 |
6) | 70%エタノール | 1-2分 |
7) | 流水洗 | 水を変え5-6 回洗う。 |
B) ヘマトキシリンエオジン染色
1) | 脱パラフィンを行い、水洗 | ||
2) | ヘマトキシリン | 5-15分 | (各種のヘマトキシリン液により時間を調節する) |
3) | 水洗 | 水を変え数回洗う。 | |
4) | 1.0%塩酸アルコールで分別 | 5-20秒 | (マイヤーヘマトキシリンの場合No3.No4は不要) |
5) | 流水洗(色出し) | 10-20分 | (水洗の最初に、核だけが青く染まり背景がごく薄くか無色 になっているかを顕微鏡で確認する事) |
6) | エオジン | 2-30分 | |
7) | 水洗 | 水を変え数回洗う。 | |
8) | 70%アルコール | 5秒-5分 | (エオジンの染色状態を調整する) |
9) | 100%アルコール | 1-2分 | |
10) | 100%アルコール | 1-2分 | |
11) | 100%アルコール | 1-2分 | |
12) | フエノール・キシレン | 1-2分 | |
13) | キシレン | 2分 | |
14) | キシレン | 2分 | |
15) | 封入(エンテランキシレン) |
染色液作製法
a) マイヤーヘマトキシリン液
ヘマトキシリン | 1.0g |
蒸留水 | 1000ml |
ヨウ素酸ナトリウム | 0.2g |
カリミョウバン | 50g |
抱水クロラール | 50g |
結晶性クエン酸 | 1.0g |
ヘマトキシリン粉末を蒸留水に入れ加熱して溶かし、続いてヨウ素酸ナトリウムとカリミョウバンをいれて振盪して溶かす。溶けた後クエン酸と抱水クロラールを入れる。この液は作製後すぐに使用でき、前述のように塩酸アルコールなどで脱色、分別する必要もなくそのまま水洗、色出しをすればよい。液の保存は約3カ月。
b) カラッチヘマトキシリン液
ヘマトキシリン | 2g |
蒸留水 | 800ml |
カリウムミョウバン | 50g |
ヨウソ酸ナトリウム | 0.4g |
グリセリン | 200ml |
ヘマトキシリンに小量の蒸留水を加え、少し温めて溶かす。残りの蒸留水を加え、以後カリウムミョウバンから順次加えて溶かしていく。濾過後直ちに使えるが、翌日以降が安定する。染色時間は約10 分で0.5 %塩酸水で10秒程度の分別を行う。
c)エオジン液
1.0%エオジンY水溶液 | 25ml |
1.0%フロキシン | 2.5ml |
95%エタノール | 170ml |
酢酸 | 1.5ml |
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Last Updated 2005/8/18