病理学第一講座 杉原 洋行
1. 顕微鏡トモグラフィ(光学的断層像 optical section、共焦点画像 confocal image)とは
実際に組織を切ることなく、光学的な連続断層像の得られる顕微鏡トモグラフィは、共焦点レーザ走査顕微鏡(confocal laser scanning microscope, CLSM)の実用化によって可能になった。生物系に応用する場合はレーザを蛍光物質の励起に用い、蛍光シグナルを検出する。
1) 光源の問題:光源としてのレーザ光と水銀ランプの違い
一般に放電管から出る光は励起状態にある多数のガス原子の電子が基底状態にもどる過程で起こる光の自然放射によるため、波長も位相もまちまちである。水銀ランプでは、紫外領域から赤外にわたる連続スペクトルと、水銀に由来する、輝度の高い不連続的な輝線スペクトルを放射する。(輝線スペクトルに合わせて励起光の波長を設定していあるので、効率よく励起できる。)一方レーザは、励起状態の電子に強い光を照射することにより照射光と同じ、波長の光が放出される、誘導放射によるため、位相の連続した、方向性のある限られた範囲の波長の光が得られる(図3a)。波長域が限られているので、多重染色に対しては、複数のレーザ光源が必要な場合がある。
2) 共焦点系
光学的な断層像を得るためには、焦点面からくる光のみを検出する必要がある。このために採用されたのが共焦点系である。共焦点系は、対物レンズに対して光源と共役の位置に検出器(フォトマル)を配置したものである。よく用いられている落射型の光学系では、光源から出る励起光と検出器に入射する蛍光を分けるために、ダイクロイックミラーが使われている。このミラーのおかげで、図1aに示すように、同一のレンズを対物レンズとコンデンサーレンズとして用いることができる。最も重要な点は、共焦点系の光源および検出器と対物レンズとの間にピンホールを置くことによって、焦点面以外からの迷光を遮断できることである。ただ、光源はピンホールを通して点光源となるので、焦点面全体の断層像を見るためには点光源を小型のガルバノメータ・ミラーで高速で振って標本上を走査しなければならない(図1b)。更に連続断層像を得るためには、走査の度に試料ステージを一定のピッチで上下させる機構が必要である。
実験センターのCLSM (Biorad MRC600:図2)では共焦点無限遠光学系を用いている。試料から検出器までの間を長くし、試料から出た光はほとんど平行光束にして、大きな像を得ることができ、また検出器の手前のピンホールも大きなものを使うことができる(ピンホール径の調節が容易)。ピンホールを大きくすると像が明るくなるが、焦点深度が深くなり、共焦点効果(焦点面以外からの光の遮断効果)は減少する。
3) 多重染色への対応
実験センターのCLSMには、従来のクリプトン・アルゴンレーザに加えて、昨年度末に紫外レーザが増設され、DAPI、FITC、TRITCの3色の蛍光に対応できるようになった(図3)。これにより、核染色以外に、2種のシグナルの検出が可能となり、FISHによる染色体の構造解析などもできるようになった。しかし、現時点ではいくつかの問題点もある。
2. 顕微鏡トモグラフィの特長と問題点
1) 顕微鏡トモグラフィの実用上の特長
3. 実際の使用法
1) 電源on
レーザが安定するまで5分ほどかかる。紫外レーザをつけるときは、冷却水を流してから。
2) フィルタブロックの選択
3) 光軸の確認。
4) まず、水銀ランプで励起して、CLSMで観察する箇所を探す。光路をA(eye piece 100%)にする。シグナルの色に応じてフィルターボックスを選択する。
5) confocal imageをとる。
7) 異なるチャンネルの画像をmergeする。
8) 終了
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Last Updated 2005/8/17