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顕微鏡操作法実習 ー観察と撮影ー


(株)京都コーガク 大野 泰路 

はじめに
 日頃、私たちが観察している顕微鏡像は、物の形をどこまで忠実に表現しているのでしょうか。顕微鏡で物の形を拡大 し厳密に表現するためには、試料を薄く切ったり、染色するなど、試料を作製する際に様々な工夫をします。また、観察 の際には、試料に応じた顕微鏡を選択し、拡大倍率を決め観察、撮影を行います。これら試料作製から観察までの一連の流 れの中で、いずれかが不十分でも、物の形を忠実に表現する事はできません。
 この講習では、顕微鏡標本を光学顕微鏡(主に明視野)で観察、撮影する際に、よりよい像が得られるよう、光学顕微鏡 の仕組みや、操作方法について説明します。

1 虫めがね
 虫めがねの倍率は、眼の位置、像の位置によって変わり、一定の倍率ではありません。しかし、眼を後ろ側焦点においた ときの倍率は、像のできる位置の如何にかかわらず同一の値になります。
 明視の距離Do(通常250mm)に虚像をつくらせるようにおき、眼を後側焦点におけば、虫めがねの倍率は、
  m = Do / f
    = 250(mm)/虫めがねの焦点距離(mm)
となります。

2 顕微鏡とは

  •  顕微鏡は2つの凸レンズ系を適切に組み合わせ試料を拡大し観察するものです。
     試料に近い凸レンズを対物レンズと呼び1〜100倍位まで拡大します。眼に近いレンズを接眼レンズと呼び5〜20倍位まで拡大し、明視の距離にある拡大像を私たちは観察しています。
  •  顕微鏡とは、観察するモノであって計測するモノではありません。ただし、補正することによって、計測も可能になります。
  •  顕微鏡の像は正しいのでしょうか。
     顕微鏡は、モノの形を厳密な意味では表現しません。しかし、実用的相似です。

3 顕微鏡の構造と光学系
顕微鏡の倍率
 顕微鏡は、対物レンズで拡大された像を、さらに接眼レンズで拡大し観察していますので、試料の大きさと像の大きさの比が総合倍率になります。対物レンズの倍率をMo、接眼レンズの倍率をMeとすると、顕微鏡の総合倍率Mは、Mo×Meとなります。
  M = Mo × Me
    = A'B'/AB × A''B''/A'B' = A''B''/AB
  Mo = A'B'/AB , Me = A''B''/A'B'
 光学顕微鏡の総合倍率は通常40〜1000倍程度ですが、使用目的によっては、10〜1500倍程度で使用されることもあります。なお、注意を必要とすることは、付属品の使用や鏡筒の種類によって装置倍率がかかることがあります。このような場合の総合倍率は次のようになります。
  M = Mo × Me × Mi (Mi:装置倍率)

対物レンズ
 倍率は、1×、2×、4×、10×、20×、40×、60×、100×
 N.C.G、LWD、DL、DM、DIC、UV、FLUOR、P、補正環付、絞り付
 アクロマート、プランLOCKQUOアクロマート、フルオリート、プランアポクロマート
接眼レンズ
 普通視野、(視野数18、20、22)
 超広視野、(視野数26.5)
 photo、PL
 視度補正可
コンデンサ
 アッベ、アクロマート(ハネノケ式)、アクロマチック・アプラナート
 暗視野(オイル、ドライ)、低倍用、PH、DIC、P、長焦点、超長焦点
 色収差の補正の程度、(使用目的による)
光源
 タングステン、ハロゲン、水銀、キセノン他
照明法
 ケーラー、クリチカル他

4 顕微鏡の光学的性能
開口数
 開口数は、対物レンズの飾り環に倍率などとともにやや小さい数字で示されている0.25とか0.65とかいう数値です。 物体の1点から出た光が、対物レンズの最も外側に入る角度の1/2をαとすれば、開口数(NA)は次の式で表されます。
  NA = n・sin α
ここでnは、対物レンズと試料との間の媒体の屈折率で乾燥系レンズでは、n=1、油浸系対物レンズでは、n=1.515です。
 開口数は、顕微鏡の分解能、焦点深度、像の明るさを決める重要な値です。
顕微鏡の像
 一般に像は、点の集合からなります。新聞写真は約0.4mmの黒点、写真雑誌の網目印刷は0.1mm位の黒点、写真は0.01mm内外の 銀粒子の集まりです。この粒子の小さいものほど、コントラストも良く細部まで見ることができます。
微小光点の顕微鏡像
 理論的に点とみなされる微小発光体を顕微鏡で観察すると、その像は点にならず、エアリーディスクと呼ばれる広がったものと なります。これは、光の波動性に基づくもので収差のない完全レンズでも避けることはできません。一般標本の像はこの集合から なり、目標物の像は隣接部が重なっており複雑な姿になっています。
完全レンズの点像
 映像をすっきりとさせ、細部が良く見えるようにするためには、光点像の径が小さいものほど良く、これは、対物レンズの 開口数に関係し、開口数の大きいものほど小さい光点になります。一般に対物レンズは、強拡大のものほど細部を描写しないと いけないため、開口数を大きくしています。

5 顕微鏡による像
 光が狭いスリットを通るとき、光の一部はわきに広がり、スリットが狭いほど広がりは大きくなります。スリッ トの幅が光の波長にまで狭くなるとスリットのすぐまわりで光はほとんど半円状に広がります。光が波の性質を持っ ているために起きる回折現象です。このため顕微鏡の光学系においてすべての収差(球面収差、コマ収差、非点収差 、湾曲収差、歪曲収差、および色収差)を完全に補正した理想レンズで顕微鏡を構成したとしても、後に述べるような 回折現象により解像力に限界を生じます。顕微鏡の標本は、光学的に密接した多数のスリットにより構成されているの と同じで、ここに光を送ると、一部は直接光としてまっすぐ進み通過しますが、一部は回折して外側の方へ進みます。こ の外側へ進んで方向を変える光のことを回折光と呼んでいます。顕微鏡の対物レンズの口径が、物体から円錐体状に発 散してくる回折した光線束を捕まえることができるくらいじゅうぶん大きい場合にだけ、この物体の微細構造をみることが できます。しかし、回折光をつかまえることができない場合、物体は均質で平坦で、かつ無構造に見えます。
 図(A)は荒い構造の物体を見る場合で、スリットが相当広い間隔のため回折した光線束でできる円錘体の角度は大 きくなく、レンズAでこれらの回折光を捕らえることができ、構造の細部が解像できます。もっと細かい構造になると 、スリットが狭くなり回折光の光円錐の角度も大きくなり、外側に移動し、レンズからはみ出してしまいます。これが解像力の限界です。 もっと細部まで見ようとすれば、図(B)のように大きな口径のレンズBが必要になります。対物レンズを標本にできるだ け近づけ、標本とレンズの間を油浸にして超広角の光円錐の回折を得ることにより高解像力が得られます。このため開口数 の大きい高倍の対物レンズは作動距離が短くなっています。対物レンズの開口数NA=n・sinαにおいて、sinαは1よりも大 きくなることはないので乾燥系の対物レンズは開口数が0.95位がせいぜいです。また、油浸系の対物レンズは、油浸にすること によって、1.40くらいまで大きくすることができます。

6 顕微鏡の分解能と最適拡大
 顕微鏡で”物”を観察し、撮影する目的を考えると、ただむやみに拡大して大きくなればよいというものではありません。 試料の細部がどこまで識別できるかということが問題で、識別すべき部分を肉眼で見やすいように拡大するのが顕微鏡本来の 目的です。標本の細部を識別できる限度を顕微鏡の分解能といい、顕微鏡光学系のうちこの役目を果たすのが対物レンズです。
 顕微鏡の分解能は、2個の点(線)が2個の点(線)として識別できる最小の間隔を長さで表し、単位としてμmを用います。2個 の同じ明るさの点が近接しλ/(2・NA)となるとその像は1点になります。この限界の距離を物理的分解能と呼び、これより狭いも のは分解できません。(アッベの斜光照明による)
 対物レンズは、倍率などによってそれぞれ異なった分解能をもっていますが、これは、レンズには表示されていません。しかし、 そのときの光の波長をλとすれば、その対物レンズの開口数NAから分解能はλ/(2・NA)で示され、分解能を求めることができます。 。同じ対物レンズを用いれば、光源の波長が短い方が分解能は良くなることがわかります。 しかしこの分解能もあまり厳密に考えてもしかたありません。対物レンズの収差は完全に取り除かれているわけではなく、また、試料 のコントラストや照明法によっても、この値にとどかなかったり、それを上回ることもあり得るからです。
 対物レンズの分解能に関連して、われわれの肉眼の分解能を考えてみますと肉眼の分解能は、年齢や個人差によって違いますが 、だいたい0.15〜0.30mmと言われます。対物レンズによってつくられた像は、少なくともこのくらいまで拡大しないと、せっか くの対物レンズの性能を発揮できないことになるのです。もちろん、これ以上に拡大することは分解能を通り越して無効拡大(馬鹿拡大) になるので意味はありません。一般には明視距離で見るときは、その対物レンズの開口数(NA値)の500倍〜1000倍にするのがよいと されています。分解能は、光学顕微鏡の使用法の限界倍率を考えるときにどうしても必要な値ですが、同時に光学顕微鏡には、分解能を うんぬんする前に多くの役割があることを忘れてはいけません。表中の分解能のところで、物体間隔とあるのは、その対物レンズの解像 力で、どこまで分解できるかを試料上で表した数です。像間隔とあるのは顕微鏡によって物体間隔が拡大され、つまり、像が拡大されて 眼に入ってくる像の分解能の大きさを表した数で、この数がだいたい0.15〜0.30mmの中にはいっています。

7 顕微鏡像の焦点深度
 焦点深度とは、焦点の合う範囲(厚さ)で肉眼で検鏡するときは、n・λ/2・NA・NA(物理光学的焦点深度)+ n/(7・M・NA) (単位:mm)(幾何光学的焦点深度)で表されます。写真撮影の際はほぼ前者で決定され、低倍写真の焦点合わせには細心の注意が必 要となります。
 同一倍率の場合、高倍の対物レンズと、低倍の接眼レンズの組み合わせと、その逆の組み合わせの差異を表に示します。表からわかり ますように、分解能が必要な場合は、高倍の対物レンズを、また、焦点深度が必要な場合は、低倍の対物レンズを選択するのがよいよう です。

8 顕微鏡の能力
 もっと細かい組織(構造)があるのではないでしょうか?
解像の限界
 もっと細かい組織(構造)があるのではないでしょうか?
図1
  e = K・(λ/n・sinα) = K・(λ/NAo)
  K = f(k)、 k = NAc/NAo
 k=1.5付近でKが最小になりますが、実際にはk=0.7〜0.8すなわちコンデンサの絞りを若干絞り込んだ方がコントラストが良く見やすくなります。
 k=1すなわちNAc=NAoのときK=0.61であり

  e = 0.61・(λ/NAo)
これをRayleigh limitと呼びます。

9 対物レンズの色収差と、対物レンズの像面の湾曲(平坦性)の補正の程度

10 ケーラー照明法
 ケーラー照明は、1893年ドイツのキーゼン大学動物学教室で顕微鏡写真を撮影していたケーラーが考案したものです。この方法は、フレアーや、ゴーストをできるだけ除去し、ムラの少ないコントラストの良い明るい像をつくることを目的としたもので、今日も多く用いられ、写真撮影には不可欠なものです。ケーラー照明に必要な条件は次のとおりです。

  1. 光源像をコンデンサの焦点面に投影すること。
  2. 視野絞りが標本面上に正しく結像し、かつ、必要な部分にまで絞り込めること。
  3. 対物レンズの開口数に見合うだけコンデンサと照明系の開口数があり、かつ、コンデンサの開口数を調整する絞りを有すること。
  4. 視野絞りと開口絞りが独立して働くこと。

11 ケーラ照明の手順

  1. 試料に焦点を合わせます。
  2. 視野絞りを小さく絞り、コンデンサを上下させて視野絞り像を標本面に結像させます。
  3. 視野絞り像が視野中心部にない場合は、視野絞りの像をコンデンサ心出しネジの操作により中央に移動させます。(このとき、絞りを徐々に開いて行き中央に移動させるとよい。)
  4. コンデンサ開口絞りを絞り込み、コンデンサ開口絞り面に光源ランプのフィラメント像を結像させます。(正立顕微鏡の調整の際は、コンデンサの開口絞り面を下から覗きフィラメント像を確認します。)
  5. 観察の場合は、視野絞りを接眼レンズの視野に外接する程度まで広げます。
  6. コンデンサ開口絞りの調節を行います。
     コンデンサ開口絞りは、解像力とコントラストをコントロールするのに用います。その調節方法は、次の2通りがあります。
    *コンデンサ絞り像による調節法
     接眼レンズを鏡筒から外し対物レンズの瞳面を見ると、コンデンサ絞りの像が見える。この像の大きさを、対物レンズの瞳の70〜80%の大きさに調節する。(コントラストの低い試料は、絞る割合を少し増すとよい。また、コントラストの高い試料の場合は、逆に絞りを広げるとよい。)

    *コンデンサ開口数目盛りによる調節法
     コンデンサの目盛りは、開口数で表示されているので、対物レンズの開口数の70〜80%の値に開口絞りを絞って用いる。
     例)40×(NA 0.65)  0.65×0.7〜0.8≒0.49
  7. 視野絞りの調節を行います。
     写真撮影における視野絞りの操作は重要です。フレアを発生させる余分な光を制限(遮光)するため撮影する画面よりやや広い範囲(35mm判では図参照)まで絞って撮影するとよい。このときコンデンサを上下して、視野絞り像が最もハッキリした位置を探す必要がある。また、視野絞り像の偏心が目立つときは、コンデンサを操作し心だしを行う。

12 写真撮影法の注意点
 ケーラー照明

 視度調整

 無効拡大

 測光範囲

 色温度

 照準望遠鏡

 フィルター

 目盛

 データ写し込み

13 機械的鏡筒長
 機械的鏡筒長とは、対物レンズを取付けるレボルバーの下面から接眼レンズを挿入する鏡筒の上端までの距離をいいます。この機械的鏡筒長が変わると、光学的筒長も変わります。このため、対物レンズの倍率が同じでも観察倍率が変化してしまい、焦点も同焦点にならないようになります。特に、鏡筒長が大きく変わると対物レンズをはじめ、その他の光学系が基準をはずれることになるため、顕微鏡の諸性能が著しく悪化し分解能やコントラスト等も悪くなり、良い像が得られません。ちなみに、現在生物用としては各メーカーとも160mm、金属用が210mmのものが主流です。

14 光学的筒長
 対物レンズの後側焦点Fo'から接眼レンズの前側焦点Fe(結像面C)までの距離を光学的筒長といい、通常、△で表し、これは、対物レンズの倍率によって変化します。対物レンズの倍率Moは、その焦点距離をfoとした場合、Mo=△/foとなり、また接眼レンズの倍率Meはルーペと同じ役目をするので、その焦点距離をfeとしたときMe=250/feとなります。この関係から顕微鏡の倍率は次のような式で表します。
  M = Mo × Me = △/fo × 250/fe

15 同焦点
 標本に焦点を合わせた後に、対物レンズ、および、接眼レンズを他のレンズに交換して観察しても、焦点合わせをすることなく、ピントのあった像が観察することができることを、同焦点といいます。同焦点を保つには、すべての対物レンズの結像面が一定の所にできることが必要です。同様に、接眼レンズの前側焦点も対物レンズの結像面の近くにくることが必要です。なお、レボルバーの下面から標本面までの距離を同焦点距離といい、現在多くの対物レンズが45mmです。他には33.6、37.0、60.0mmのものがあります。

16 作動距離
 標本に焦点を合わせたとき、対物レンズの先端から試料の上面までの間の距離を作動距離といいます。これは、対物レンズの倍率が高くなるにしたがって、また、開口数が大きくなるにしたがって、短くなります。

17 倍率と実視野の関係
 見かけの視野の大きさは接眼レンズの倍率と、接眼レンズの視野数(視野の広さを示す値)の積によって決定されますが、実際に見える試料の範囲が何ミリかを示す実視野は次の計算によって求めます。
 実視野(mm)= 接眼レンズの視野数/(対物レンズの倍率Mo×装置倍率Mi)
 一例として10倍で視野数20の接眼レンズを用い、対物レンズ4倍、装置倍率1.25倍のとき実視野は、4.0mmとなります。

18 対物レンズの表示
 対物レンズは、研究目的、用途に合わせ様々な性能をもったものがあり、それらを識別できるように鏡胴面に、倍率や、開口数、油浸記号、性能、その他種々の記号が記入されています。
 記号の意味については次のとおりです。
倍率
 倍率は、1×、2×、4×、10×、20×、40×、60×、100×と表示しています。
種別
 対物レンズの色収差補正状況と像面平坦性の組み合わせにより、アクロマート(無印)、プランアクロマート(Plan)、プランアポクロマート(Plan Apo)等があります。
作動距離
 対物レンズの先端(試料側)からカバーガラス上面までの距離を表示しています。通常、高い倍率の対物レンズになるほど作動距離が短くなります。
カラーコード
 各倍率によって、次のようなカラーコードがついています。
1×黒、2×茶、4×赤、10×黄、20×緑、40×ライトブルー、60×コバルトブルー、100×白
開口数
 対物レンズの明るさを示し、分解能や焦点深度にも深い関係をもつ大切な値です。
液浸マーク
 液浸式の対物レンズには、そのレンズに合った浸液の種類を示す表示があります。イマージョンオイルは、黒色、純度の高いグリセリンを使用する場合は、オレンジ色の表示があります。
補正環
 開口数が大きい乾燥系対物レンズでは、カバーガラスが基準の厚さと異なると、球面収差等の諸収差が生じ、分解能、コントラストが悪くなります。このため、補正環をカバーガラスの厚さに応じ可変し、カバーガラスの厚みによる諸収差を補正することができます。各対物レンズによって異なりますが、補正環の可動で良質な像を得ることができます。補正環の調整は、補正環を0.17の目盛りにセットし焦点を合わせ、像の見え具合をチェックします。次に、補正環を2目盛り程度づつ回して、焦点を合わせ、像の見え具合をチェックしながら最良の像が得られるまで回します。

19 収差について
 顕微鏡の分解能は、対物レンズの性能の善悪により決まることは先に述べましたが、対物レンズの性能は、開口数と、光源の波長のほかに、レンズの収差によっても大きく影響されます。収差は、レンズによる光の屈折に関係があり、分解能に影響を及ぼす収差には、球面収差、コマ収差、非点収差、湾曲収差、歪曲収差、および、色収差があります。その中でも大きな影響を及ぼすのが色収差と像面湾曲収差です。
 色収差とは、可視光線がレンズを通過し屈折するとき、光線の波長(色の違い)によって屈折率が異なることにより結像する際に色のずれが生じ、像がじむことをいいます。
 像面湾曲収差とは、凸レンズで平坦な試料を拡大するとき、光軸上からでた試料からの透過光と光軸外からでた透過光とが、結像する位置が異なることにより生じ、像が湾曲し視野中央部と周辺部で焦点位置がずれる現象をいいます。

20 検出可能な大きさ
 暗視野法や限外顕微鏡のように、暗い背景に輝いて見える場合は、明るささえ許せばどんなに小さいものでも見ることができます。しかし、明視野法のように明るい背景に黒く見える場合には制限があり、無収差レンズを用いたときの理論計算値では分解能の1/4、黒線は1/50程度までといわれます。これはいずれもただみるだけで、形や構造は全く信頼できません。

21 計測について
 顕微鏡による長さの計測には、視度調整付き接眼レンズ、接眼ミクロメータ、対物ミクロメータ、測微接眼レンズ等があります。
 なお接眼ミクロメータの目盛りには、物差状目盛、十字目盛、同心円、方眼等があります。

22 カバーガラス
 対物レンズの性能を保つためにカバーガラスの厚みは0.17mmを使用してください。
 表は、カバーガラスの厚さの誤差による像の悪化の程度を示したものです。たとえば、NA 0.95のとき、カバーガラスに0.01mmの誤差があると結像性能は、本来の29%に低下し、ノーカバーではほとんど結像しません。



  *図は、当日配布の資料をご参照下さい。

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Last Updated 2005/8/17