解剖学第一講座 山本 寛、徳永義光、藤宮峯子
1 はじめに
電子顕微鏡は、方法の複雑さゆえに敬遠されてきた傾向がある。しかし、ダイヤモンドナイフと全自動ウルトラミクロトームの
組み合わせにより、技術上の律速段階であった超薄切片がいとも簡単に作製できるようになった。また、本教室では金コロイド法
による免疫電顕をルーチンに行っており、物質の細胞内局在に関して多くの知見を得ている。本講習会では、電顕法に対する偏見を
取り除き、より多くの研究者に気軽に形態学的方法をマスターしてもらうのを目的にしている。
2 ビブラトーム切片作製法
従来の電顕試料は、生体から切り出した立方形の組織片を固定、脱水、包埋する方法が一般的であった。この方法の難点として、1)電顕観察する部位をあらかじめ光顕レベルで観察できず、めくらで超薄切片を切ることになる。2)細胞の極性(方向性)を保ちながら超薄切片を作ることが不可能である、などが挙げられる。これを解決したのが固定組織のビブラトーム切片作製法である。クライオスタット切片に比べて、凍結操作で起こる微細構造の破壊が回避でき、浸襲の少ない切片作製法である。
免疫電顕は、包埋前染色法と包埋後染色法に分けられる。包埋前染色法は、ビブラトーム切片に免疫組織化学を行い、DAB反応の沈着部位を電顕で観察する方法である。一方、包埋後染色法は、金コロイドで標識した抗体で超薄切片の免疫組織化学を行い、金粒子の局在を電顕で観察するものである。この場合にもビブラトーム切片を作製し、目的の場所を光顕で選んでから超薄切片を作製するか、または切片をDABで包埋前染色し、その後さらに超薄切片の包埋後染色を行う。
3 ウルトラミクロトーム切片作製法
ライヘルト社のウルトラミクロトームと、ダイアモンドナイフを組み合わせることで、初心者でも数時間後にはシルバー(50 nm- 60 nm)の切片を切ることができる。機械の操作に慣れていれば、面出しにガラスナイフを使う必要がなく、一本のダイアモンドナイフで常に完璧な超薄切片の作製が可能である。また、一つの細胞から連続切片を切り出すことも簡単にできる。
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Last Updated 2005/6/22